THE WAY HOPE GOES
桐山和雄。脳の一部に欠陥がある男。「バトルロワイアル」に登場する、中学三年生のキリングマシン。幼少期に外的要因にて脳の一部を損傷以降、他者への感情がほぼ皆無。慕う級友にも容赦なく銃口を向ける。
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毎日同じ時間に目が覚める。
まずは天気予報を隈なくチェック。一週間単位で確認し、天候マターの予定を随時調整する。
情報番組を眺めながら朝食を摂る。たまに摂らない。
足の指に制汗剤を塗布する。
床を掃除し、ゴミを纏めて、出勤。
仕事はそつなくこなす。新人からよく業務の相談を受ける。委託元からも、ある程度評価される。努めて明るく陽気に従事する。
タバコは三日に一箱を厳守。一ヶ月でワンカートンの計算。
飲酒量も一ヶ月でのトータル量を完全にコントロールする。
週に一回必ず洗濯する。
支出を全てスケッチブックに書いたカレンダーに記入し、金銭の出入りを完全に掌握する。
帰宅。手を洗う。靴下を所定の場所に始末する。
レコードをかける。
ストックしてある食材で晩酌。キッチンに居ながら揚げたての唐揚げをレモンサワーで流し込むのが愉悦。ストック量を常に把握。平日分の献立は二週間先ぐらいまで事前に考えておく。
乾き物で黒ウーロンハイを嗜む。
シャワーを浴び、その日のうちに洗い物を済ませる。
歯を磨く。
ベランダでタバコを吸う。
気絶する様に就寝。
これらをただ繰り返す。
毎日。
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少しずつ、本来の自分自身を取り戻している感覚。もう誰にも何も任せない。頼らない。意図的に孤立する。
全てを徹底的(この場合はテッテ的と言うのが妥当か)に把握し、コントロールし、統制する。SF映画のディストピア社会の様に。
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僕には、感情がない。新型肺炎で国民的コメディアンが急逝した。周囲が哀しみに暮れる中、僕は全く感情移入が出来なかった。会ったこともない人間の死を悼む心が理解できない。
もっと言うと、目の前にいる人間の感情を読み取ることも苦手である。常識とか、良識とか、人として当たり前だったり当然だとされる共通認識とか、そういう類の脳機能がごっそり存在しない。
これまでは、あたかも、それらがあるかの様に、振る舞っていた。自分自身にも備わっているものだと思い込んでいた。
しかし、ないのだ。ないものは、ない。
感情のスイッチが他者とズレている。間違いなく。
よく誤認されるのだが、僕の創作は感性ではない。論理だ。僕というフィルターを通した世界をロジカルに言語化しているだけである。そこにも、感情は希薄である。
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僕は、これから先の人生を、オープンワールドRPGだと思うことにした。全てが数値化され、それをただ弄るだけの世界。自分自身を俯瞰して、完全にコントロールするのだ。そこには他者の意図が介入する隙はない。
しかもいわゆる「強くてニューゲーム」なのである。言わば「二周目」。同じ轍は踏まない。石橋を叩いて割るタイプ。叩いて、割って、迂回する。急がば回れ。大丈夫、時間はあるから。
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おかえりなさい。